2009年01月07日

中国語習得の先に見えるもの

伝えることの難しさ

 

 一流日系企業で働く中国人社員の方々の研修に、講師として参加しています。会社には「企業理念」があります。それが、中国人社員に伝わらないことがあるんですね。特に、平和憲法を掲げる日本の企業に多いのが、平和への貢献や環境への貢献などに関わる理念や目標です。これは、外国に出たとき、日本人として本当に誇りに思える理念や目標であり、最も外国に人たちに伝えたいメッセージになります。

 しかし、ある日系企業での研修で、中国人社員から出てきた目標設定は「軍事産業への市場開拓」でした。さらに、その社員の中国人上司までが「いい発表だった」というものだから、これを聴いた日本人総経理は怒り心頭。「わが社の企業理念は軍事産業には一切関わらないことだ」と顔を赤くして一喝。

 

 この会社には、中国語を話す日本人幹部もいます。さらに多くの中国人社員が日本語を話せる。そんな状況の中でも、企業のハートの部分が社員に浸透していない。

 

 伝えることは、本当に難しいんですね。だからこそ、中国語で中国人社員に会社の理念をしっかりと伝えることができる日本人人材がいれば、それは、その企業にとって本当に価値のある人材になるはずです。「伝える」とは言葉だけでは不十分で、伝える人の魅力までが必要になってくると感じます。中国の人が「この日本人は何か、すばらしいものを持っている」と思われるようなものです。それは、学歴や肩書き、中国語がうまいか下手か、という単純なものではない、何か。

 

 思うにそれは、中国語で、日本人として、自分の生き方や自分の国を語れ、相手を尊重し、受け入れる懐の深さを持った「大きな日本人」ではないか。

 

 そんな日本人が、中国語で語り始めたら、中国の人たちは必ず耳を傾け、少しずつ心を開いてくる。中国語を勉強し始めれば、より上手になることも目標ですが、もっと大事なことは、中国語で、中国の人に伝えたい何が自分の中にあるのか、だと中国の人たちを相手にしていて感じています。

 

中国語を学ぶことは、レベルの問題だけで、それほど難しいことではありません。しかし、中国語で大事な何かを伝えることは、とても難しいことです。

 

代表PROFILE:
住田 崇(すみだ たかし)
 GOKU-PROJECT代表。中国語講座《ネット留学・ちゃい語大学》をはじめ、日系企業向けコンサルタントとして、中国語による取材や研修に携わる。
 立命館大学卒業。在学中、南京大学に留学。23歳で初めて中国語を学ぶ。大学卒業後、京都新聞社編集局で記者として約8年、滋賀、京都を中心に取材・執筆。同社を辞めた後、家族3人一緒にニュージーランド・クライストチャーチで4ヶ月過ごし、2005年、家族で北京へ。現在に至る。
 

2008年11月19日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道015 発音を学ぶ 〜其の四〜

「モノマネ」を取り入れよう♪
「学ぶ」という言葉は、「真似ぶ」と同語源だそうです。つまり、学ぶことと真似をすることは密接な関係にあるといえます。私の経験から言いますと、中国語の発音上達のコツはこの「真似ぶ」、つまり中国人をモノマネすることにあると言えます。子供は成長の過程において親のモノマネをして“語学”をマスターします。私もネイティブ・スピーカーのレベルに達したいのであれば「ネイティブ・スピーカーが喋っているのをそっくりそのままモノマネすればいい」と考え、早速これを実行に移してみました。これが非常に大当たりで、私の中国語発音を更なる高みへと導いてくれました。 

方法はいたって簡単で、教科書に附属されているヒアリングテープやCDを使います。このような教科書附属のテープの中国語発音は非常に正確で、単調のようにも思えますが、実は一人一人の発音、発声は異なります。私もまずはこの特徴をおさえる所から始めました。例えば、「この女性の『
不知道』という発音は『』が微妙に強いなぁ。」とか、「この男性は随分間延びして発声するなぁ。」といった感じです。これを全てモノマネしていきます。このような特徴を耳で聞き分けたり、耳で聞いたままの音をそのまま発声するのは、いうほど簡単ではありません。これも毎日繰り返すことによって、徐々にできるようになっていくのです。
 

次のステップでは歌手や芸能人、漫才師のモノマネを徐々に学習に取り入れていきました。この場合も学習方法は至って簡単で、気に入ったフレーズをみつけてモノマネするだけです。ラジオ、テレビ、映画などソースはどこからでもかまいませんが、繰り返し聞けるものを使用してください。私のブログ「村哥の映画で学んでみなチャイ語」をご愛読いただいている方は、これを使うのもいいでしょう。最初の内は一言の単語や、比較的短い文章を選び、徐々にそれを長くしていきます。最終的には15秒くらいモノマネで喋れるようになれば理想的です。
 

なかでも、言葉を売り物としている漫才師や、役者のモノマネでは特に大きな収穫を得る事ができました。ここでは中国語の正確な発音というよりも、中国人独特の「息遣い」、「間の取り方」、「会話のリズム」を学び取る事ができます。日本人の中にも非常にきれいな中国語を話すけど、なんか中国人とはちょっと違うという人がたくさんいます。これこそまさに、「息遣い」、「間の取り方」、「会話のリズム」の学習が不足しているのです。「学ぶ」=「真似ぶ」、このモノマネ学習法を一度試してみては如何でしょう。
 

ちゃい語アドバイザー
村哥

執筆者PROFILE:

2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。【ブログ】村哥の映画で学んでみなチャイ語
 

2008年10月22日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道014 発音を学ぶ 〜其の参〜

前回に引き続き、私の発音練習経験に基づき、実際に役に立った発音の勉強方法を実例に基づいて紹介していきます。

早口言葉で発音練習
中国の早口言葉は『口令(ràokǒulìng)』と呼ばれ、数え切れないほど存在しています。私も日本で中国語を勉強していた時や、中国留学に来た時に多くの先生からこの早口言葉を練習するように勧められました。中国では子供からアナウンサー、漫才師、俳優等のプロまで、多くの人々がこの早口言葉を使って発音を鍛えているのです。

早口言葉というものは、もともと話しにくく、区別し難い言葉を並べた短文を、如何に早く喋るかというものです。この早口言葉を発音練習に取り入れることにより、意外にも苦手の発音ができるようになったという声も聞いたことがあります。

練習の際にはまずは焦らず、一つ一つはっきり発音し、決して曖昧な発音でごまかさないで下さい。それができたら徐々にスピードアップしていきましょう。早口言葉を教える際に、「これはどういう意味ですか?」という質問をよく受けます。当然それぞれの早口言葉にも意味はあるのですが、別にその意味を知る必要は無いと私は思います。あくまで発音の練習なので、その意味に固執するのではなく、舌、唇の筋肉を鍛える事に集中しましょう。日本語の早口言葉の代表である「生麦生米生卵」や「赤巻紙青巻紙黄巻紙」なども、別に意味を知る必要はありませんからね。

ここでは私が練習に取り入れた早口言葉の一部を紹介いたします。日本人が苦手とする発音の組合せを中心に選択してみましたので、是非練習してみてください。

吃葡萄不吐葡萄皮儿,不吃葡萄倒吐葡萄皮儿
chī pútao bù tǔ pútao pír , bù chī pútao dào tǔ pútao pír
※私が一番最初に習った早口言葉です。

四是四,十是十。十四不是四十,四十不是十四。
Sì shì sì, shí shì shí. shí sì bú shì sì shí, sì shí bú shì shí sì
※舌歯音の「si」と捲舌音の「shi」の発音をしっかり区別して発音!

高高山上一条藤,藤条上挂。吹藤,停藤停静。
gāo gāo shān shàng yī tiáo téng , téng tiáo tóu shàng guà tóng líng.
fēng chuī téng dòng tóng líng dòng , fēng tíng téng tíng tóng líng jìng.
※日本人には難しい鼻音の「n」と「ng」違い、「eng」と「ong」の違いを意識!

ちゃい語大学アドバイザー
村哥


執筆者PROFILE:
2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。
【ブログ】村哥の映画で学んでみなチャイ語


2008年09月24日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道013 発音を学ぶ 〜其の弐〜

ここでは私が試行錯誤を繰り返し、実際に役に立った発音の勉強方法を紹介していきます。 

基本の音読!
最初の基本は音読です。この練習を欠かすことは絶対に許されません。最初の内は音読すると、発音の方に気をとられてしまい、なかなか内容がつかめない事があります。発音の練習に関してはそれでいいのです。音読では理解することに重点を置くのではなく、正確な発音を出せるように心がけましょう。音読の際には、意識的に口を大きく開けて、大きな声で発声してください。特に初級者は漢字ではなく、ピンイン表記を見て声調に気を配りながらゆっくりとそして正確に発音しましょう。 

録音機器を使ってチェック
私の時代ではテープレコーダーを使っていましたが、今はもっと高性能の機材があるのでしょうか。何でもかまいませんので、録音できてそれを聞くことができる機材を用意します。まずある程度、自分で納得のいく音読ができるようになったら、自分の声を録音しそれを聞いてみましょう。自分では正しいかどうかが判断できないので、教材のテープと交互に聞いて比較します(私はカセットデッキが2つついているラジカセで練習していました)。最初はなかなかわかりませんが、慣れてくると徐々に自分の発音のくせや、ネイティブとの違いが耳に入ってきます。この練習は発音の矯正を目的としていますが、ヒアリングの練習にもなっています。 

家庭教師を探してみよう
日本に滞在している外国人の中で、中国人は堂々の一位に輝いています。つまり、生の教材が我々の近くにいるのです。これを利用しない手はありません。学生であれば、学校で留学している中国人と相互学習をしてもかまいませんし、市や県で行われている中国語講座に通い、そこの中国人先生と仲良くなって家庭教師をお願いする手もあります。私の場合は後者でした。発音練習に関しては、少人数制の授業の方が当然効果的です。中国語の発音練習では妥協は絶対に許されません。先生に前もって「間違った発音は徹底的に直してくれ」という旨を伝えましょう。ちなみに私の場合は4人で授業を受けていました。 

以上を総合した発音練習を、初期学習の段階では徹底的に行いました。
(1)              予習として、徹底的にテキストの音読練習。
(2)              中国人の先生に直接指導を受け発音を矯正。
(3)              復習として、音読の内容を自分でテープレコーダに録音。特に先生に注意された点に気をつけながら修正を行う。
(4)              再度中国人の先生に聞いてもらい、正しいかどうかを確認する。

 
全ての人にこの学習方法が適しているとは限りませんが、中国語学習初期段階において非常に効果を発揮する学習方法だと思います。 

ちゃい語大学アドバイザー
村哥

 

執筆者PROFILE:

2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。【ブログ】村哥の映画で学んでみなチャイ語
 

2008年09月10日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道012 発音を学ぶ 〜其の壱〜

日本の中国語教材の中には、カタカナを用いて発音を表記している刊行物が数多く見られます。このカタカナの存在こそが、我々日本人の発音能力の低下を招く根源ではないかと私は考えます。もともと世界的にみても母音が非常に少なく、母音をはっきりと発音する日本語を他国語の発音に置き換えるという発想自体に無理があります。音節で見ても、中国語より日本の音節の方がかなり長くなります。例えば、『』はピンインでは〔zàijiàn〕と記し2音節であるのに対し、カタカナで書くと「ザイジエン」となり5音節になってしまいます。また、カタカナでは中国語特有の声調を表すことができません。これからもわかるようにカタカナをつかって覚えてもネイティブスピーカーの発音に近づく事は絶対に不可能なのです。特に中国語は、正確に発音できなければなかなか通じませんし、ちょっとした発音の違いで全然違う意味になってしまい、誤解を招いてしまう危険をはらんでいます。中国語は発音こそが“コミュニケーションの命”と言っても過言ではありません。かの相原茂先生も「中国語発音よければ半ばよし」と言っておられます。 

人間は自分の発音できる音しか聞き取れず、ヒアリング能力を向上したいのであれば、まずは自分が厳密な発音をする事が大切とよくいわれます。つまり、中国語の発音練習は会話をするための基本中の基本であり、ここを怠ると後々必ず大きな障壁となってみなさんの目の前に立ちはだかることでしょう。
私も中国語の発音練習初期段階では相当な時間を費やして、自分が納得するまで猛特訓しました。今の私の発音があるのはその苦労のおかげだと胸を張って言えます。これから中国語を勉強する方はもとより、すでに勉強を始めているけど発音が苦手な方も、基本に立ち返って再度練習してみましょう。
 

発音をマスターする事はネイティブスピーカーの域に達する為の登竜門であり、発音学習を最も苦手とする日本人の鬼門ともいえます。ここでは、私の中国語発音練習の経験とそのコツを紹介していきます。
 

ちゃい語大学アドバイザー
村哥 

      
発音練習を実際に始める前に、中国語発音に関する予備知識の学習は絶対に必要です。まだ、中国語の勉強を始めていない方は、必ず初級のテキストやオンライン講座などを使って前もって勉強しましょう。ここではこの基礎(ピンインの書き方、四声、声調の変化、母音、子音)はわかっているということを前提で話を進めます。

 

執筆者PROFILE:

2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。【ブログ】村哥の映画で学んでみなチャイ語
 

2008年08月27日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道011 予習、復習の方法

中国語を勉強されている方の中で、いかなる授業にも参加せず完全に独学で勉強されている方は少数派だと思います。学校の授業、地方自治体が主催している中国語講座、家庭教師など、多くの方が何らかの形で授業に参加していることでしょう。ここでは、具体的な中国語学習のテクニックを紹介する前に、私がずっと続けてきた予習、復習の方法を紹介したいと思います。 

授業前に予習を行うことで、授業の理解度を高め、内容を脳に深く焼き付けることができます。私の場合は、新出単語の暗記本文の朗読は、どんなに時間がなくても必ず行いました。また、その課の中で不明な部分を数点ピックアップし、授業中にその説明が無ければ、必ず先生に尋ねるように心がけました。
 

私の場合は予習よりも復習に重点をあててきました。これは予習を疎かにしてきたという意味ではなく、復習に費やす時間の方が結果として長かったということです。復習では、予習で行った新出単語の暗記、本文の朗読に加え、付属のテープを使ったヒアリング練習会話を想定したイメージトレーニング新出単語を使った短文作成などを重点的に行いました。また、作成した短文を先生に見せて、正誤をチェックしてもらうことも欠かしませんでした。
 

人間の記憶力というものはいい加減なものです。せっかく覚えた単語も次の日にはその多くが脳から消失しています。この非常にいい加減な記憶力をできるだけ持続させ、最終的には自分の血肉に変え永遠に忘れない方法を模索してきました。最終的に行き着いた方法は、非常に単純ですが復習を繰り返し行うことでした。例を挙げて、具体的に見てみたいと思います。
 
4/1第1課予習

4/21課復習

4/31復習、第2課予習

4/42課復習

4/52課再復習、第3課予習

 

ここでのポイントは再復習です。私も同じ内容を最低2回復習することで、多くの単語や表現方法が身につきました。

 
なお、私は現在中国語の授業には出ていませんが、中国語学習は毎日続けています。ここでも上記の方法を応用し、「再学習」を実施しています。具体的には、

1課⇒第2課・第1課⇒第3課・第2課⇒・・・

といった方法です。学習方法は十人十色です。もし自分オリジナルの学習方法を構築していないのであれば、この村哥流学習法を試してみては如何でしょう。
 

ちゃい語大学アドバイザー
村哥

執筆者PROFILE:2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。
【ブログ】村哥の映画で学んでみなチャイ語
  

2008年08月21日

北京オリンピックの違和感

 
 世界最大の陸上競技場でいくつもの偉大な記録が出ている。特に注目すべきは、ジャマイカのウサイン・ボルト。100mで9.69秒、200mでも19.30秒の世界記録を叩き出した。弓を引くようなパフォーマンスや、ゴール後のダンスなど、22歳のアスリートから、走ることの自由、スポーツの楽しさを多くの人々が享受しているのではないだろうか。世界のスポーツファンは、北京から目が離せない。

  
一方で、中国陸上界のスターである110mハードルの劉翔が予選でレースを棄権した。テレビの画面に映るアテネの王者は、レーススタートラインに登場したときから、明らかにこれまでの、どのレースの直前の表情とも違った。苦悶の表情に満ちていた。「あー、走れないんじゃないか。どこか故障しているぞ」。一見して伝わってくる。しかし、110mハードルのレース直前まで、中央テレビの女性リポーターが「劉翔の表情は、他の選手よりも引き締まっていて、期待できる」などのコメントを出し、国民の期待を煽り立てていた。ネット上では劉翔攻撃が続いている。次期国家主席候補に最も近いといわれる習近平副国家主席が、「劉翔選手の回復を祈る」と一スポーツ選手の故障に対して、異例のコメントを出し、火消しに回っているぐらいだ。さらに、バドミントンの女子ダブルスの選手など、期待された種目で金メダルがとれなかった選手たちは、テレビカメラの前で、涙を流して「私は一生懸命やったけど、でも五星紅旗を上げられなかった」と弁解のようなコメントを話していた。  すでに40個を越える金メダルを中国は獲得している。金メダルを取れない中国選手には、これほど居心地の悪いオリンピックはないのではないだろうか、と心配になる。

  相変わらず、日本へのブーイングもひどかった。特に、体育館で行うバレーボールでは、日本代表へはブーイングの嵐。男子バレーの中国戦では、日本のサーブのたびに耳をふさぎたくなるほどのブーイングで、オリンピック精神などは観衆には微塵もなかったようだ。しかし、数日後に行われた女子バレー日本対中国戦では、状況は一変した。ブーイングは消えた。会場では、試合前から「文明的応援を。両チームに応援を」とアナウンスが繰り返されていた。

 
 先に行われた女子マラソンでは、沿道を多くの中国人が埋めて、各国選手に応援を送っていたが、これらはご近所の人々を動員しての応援だった。一方で、本当に応援したくて集まった外国人などからは不満が出ている。あるカナダ人の友人は「沿道に出ようとしても、警察やボランティアに止められた。中国人は沿道で応援しているのになぜだ。こんなマラソンは初めてだ」と憤っていた。

 
 五輪前、「チケットダフ屋は許さない」と意気込んでいた北京五輪委員会だが、各会場の周辺はダフ屋だらけだ。彼らは、五輪を楽しもうとする楽しい雰囲気を完全に壊している。現場の公安(警察)も、この状況を実際は見てみぬふりだ。10倍以上の価格でチケットが売られているという。すでに公安は300人近いダフ屋を逮捕したというが、ごく一部に過ぎないだろう。そして、試合会場では、3割を超える空席状況だという。多くの観戦したい人達が試合を観戦できないでいる。

 
 元国際五輪委員会会長のサマランチは20日、「北京五輪はこれまでで最も成功したオリンピックだ」と、中国人記者に囲まれ答えた。そして、それがニュースで放送された。

 
 果たしてそうか。北京五輪は成功した部分とともに、大きな課題を露呈している。鳥の巣をはじめ、各施設は一流、ボランティアの数も過去最多ですばらしい。しかし、一人、一人の市民が代表選手たちに敬意を示し、みながスポーツ観戦を自由に楽しむという環境が育っているのかどうか?

 中国では選手の発掘、育成を国が行う。国民一人ひとりが自由にスポーツを楽しみ、そこから才能ある選手が育っていく国ではない。そして北京五輪では観戦者まで国が動員した面もある。多くの市民は目の前で行われている28競技302種目のルールを知らない。代表選手にも、「国のために金メダルを取る任務を背負った選手」と映っているように感じる。

 「ひとつの世界、ひとつの夢」というスローガンに少し違和感を感じながら、祭典をみている。



代表PROFILE:
住田 崇(すみだ たかし)
立命館大学卒業。在学中は南京大学に留学。23歳で初めて中国語を学ぶ。大学卒業後、京都新聞社編集局で記者として約8年、滋賀、京都を中心に取材・執筆。同社を辞めた後、家族3人一緒にニュージーランド・クライストチャーチで4ヶ月過ごし、2005年、家族で北京へ。中国人研修生派遣、語学留学生、農民工の問題を中国の現場から取材。発展著しい北京で、独自の視点から中国現地情報、中国語学習教材を日本へ発信することを目的にしたGOKU-PROJECTを起業して、現在に至る。
    
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2008年08月14日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道010 中国語上達の方程式

これまでは、ネイティブ・スピーカーの中国語力に到達するという目標を達成するために、メンタル的な面に重点をおいて、私の思いつくままに書いてきました。これまでの話で、村哥流中国語学習方法が漠然と見えてきたのではないでしょうか。 

私が中国人や日本人の学生に語学学習のポイントを話す際に、必ず教える方程式があります。

(耐心+毅力)×当的学方法=的速度
根気強い意志)×適当な学習方法=上達のスピード

左辺の括弧内の第1項と第2項は、これまで話してきたような精神面に関することです。これらは何事に関しても共通することです。何をするにしても、自ら意志で積極的に行い、根気強く努力を続けて初めて成功への道が開かれるのです。この方程式からもわかりますように、(根気+強い意志)が0であれば進歩はありません。しかし、人からどれだけ教えられ、諭されても、こればかりはどうしようもありません。結局は成功するもしないも、自分次第ということです。
 

左辺の第3項である「適当な学習方法」は、自分で模索することも当然大切ですが、人の経験を学ぶことによって啓発を受けることが往々にしてあります。中国語学習に関して、私は多くの学習方法を自ら試み、その中から取捨選択してきました。当時はインターネットなど無かった時代ですから、中国語学習に関する情報はもっぱら本や先生に頼っていました。当然それだけでは不十分でしたから、必然的に効率的な勉強方法を探すようになり、自らを実験台に試行錯誤を繰りかえして、オリジナルの村哥流中国語学習方法を築き上げてきたのです。今後はこの「適当な学習方法」にスポットライトをあて、具体的な中国語学習のテクニックなどを紹介ながら、実例を交えつつ村哥流中国語学習方法を体系的に示していきたいと思います。
 

ちゃい語大学アドバイザー
村哥 
執筆者PROFILE:2002年9月より北京在住。若手研究者として中国経済、金融を研究する傍ら、日中企業や大学、研究機関等の通訳・翻訳業務にも積極的に携わり、ちゃい語大学の開発、監修も手掛けている。
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2008年08月07日

中国人は勤勉か?

 

京都のある台湾料理を切り盛りしている台湾人のおばちゃんの話を2つ。

 

「日本は最近景気がよくないと言うけれど、当たり前よ。どうして、京都の百貨店は夜8時で店を閉めるの?サラリーマンもOLもみんな残業で夜9時、10時まで働いているのに。お金持ってる彼らが買い物できるように夜1112時まで店開けば、もっと景気がよくなるよ」。

 

「うちの皿洗いの中国人学生さんはね、毎日アルバイト3つしてるよ。新聞配達したあと、学校行って、お昼と夜はうちに来て皿洗い。お昼から夜までは、別の配達のバイトしてるよ。そうやってお金を稼ぐの。お金貯めてるわよ。将来やりたいことがあるってね。日本人は一つの仕事しかしないよね。それでも給料は少しはいいから。でも稼げないよ。もっと働かないと」

 

会社での残業となれば、日本人はよく働いている。しかし、大抵はサービス残業で給料には反映されにくい。つまり、お金のために働いているのではなく、仕事のために仕事をする、もしくは、会社のために長時間仕事をするのが日本人だ。法律の問題、契約の問題もあるから、兼業を“善し”としている日本人は少数派だろう。

 

一方で中国人は、お金を稼ぐために働く。働く理由はお金以外にない。そこがはっきりしている。お金を稼ぐためには、2つ、3つの仕事はやる。一日中働いていてもかまわない。仕事のために働くのではないから、仕事への向き合い方が日本人とは違う。中国人の働き方、仕事への考え方を見ていると、お金を稼ぐことへの情熱と、仕事への情熱は別物であることがよくわかる。

 

お金を稼ぐことが目的ゆえに、お金をいくら稼いでも、働くことをやめなくなるのが中国人のようだ。アーサー・H・スミスは西洋人と比較して「中国人の本性は勤勉だ」と述べている。「中国人の金持ちは、働かなくてもいい生活ができるのに、貧乏だったころと変わらず、自分たちの事業に関わって働く」と驚いている。西洋世界では、お金持ちは優雅に人生を楽しむのが普通だ。

 

農民はじめ、商売人も夜が明けない早朝から、夜遅くまで働く。「西洋人が朝ごはんを食べ終わったころには、中国の朝市は店じまいをしている」(アーサー・H・スミス)。

 

一昔前の経済なら、国民の生産力はまさしく「労働人口×労働時間」だった。その観点からみれば、中国の国民総生産は世界一だった。しかし、産業革命以後、生産現場で機械化がすすんだ。人間は機械に労働生産性ではかなわない。そのため、お金を稼ぐためには、仕事の質や情熱、創造性、知識が重要なファクターになってきた。それが、世界の進歩を促した。従来の「朝早くから夜遅くまで長時間働く」という考えだけでは、お金を稼げなくなった。しかし、「お金を稼ぐためには労働時間をいとわない。何でもする」という、数千年の歴史で培われた中国人の根本的な労働観は今も変わらない。だからこそ、世界中で華僑は商売で成功を収めている。

 

中国の日系企業の駐在員からは、「中国人スタッフは働かない」との声も聞く。しかし、それは「働かない」のではなく、「働き方が分かっていない」のが大きな理由ではないだろうか。会社という組織で働き、お給料をもらうためには量ではなく、質が必要とされていることを、中国人スタッフにきちんと説明し、理解させているかどうかが、彼らの「勤勉さ」を仕事に結びつける重要なプロセスである。

 

アーサー・H・スミスの言葉も、台湾人のおばちゃんの言葉も、「中国人は苦労をいとわず、勤勉である」ことを教えてくれている。




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住田 崇(すみだ たかし)
立命館大学卒業。在学中は南京大学に留学。23歳で初めて中国語を学ぶ。大学卒業後、京都新聞社編集局で記者として約8年、滋賀、京都を中心に取材・執筆。同社を辞めた後、家族3人一緒にニュージーランド・クライストチャーチで4ヶ月過ごし、2005年、家族で北京へ。中国人研修生派遣、語学留学生、農民工の問題を中国の現場から取材。発展著しい北京で、独自の視点から中国現地情報、中国語学習教材を日本へ発信することを目的にしたGOKU-PROJECTを起業して、現在に至る。
   
 
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2008年07月19日

村哥のネイティブ・スピーカーへの道009 名作『SLAM DUNK』に学ぶ

井上雄彦先生原作のSLAM DUNK(スラムダンク)」は、1990年〜1996年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載されていたバスケットボール漫画の傑作で、漫画もしくはアニメで見たことがある方も多いかと思います。このスラムダンクは中国でもかなり人気の高い漫画で、タイトルも『灌藍高手』や『藍球飛人』と翻訳されており、今でも多くの中国人に愛されている名作中の名作といえるでしょう。

 
そのスラムダンクでは以下のようなシーンがあります(原作をこれから見る予定の方は、ネタバレがありますので注意して下さい)。
主人公の桜木花道が、全国大会前に一人合宿を行い、コーチの安西先生とジャンプショットの練習を行います。毎日同じ練習を10日間で2万本続けます。そして、物語のクライマックスでは、タイトルにもなっている大技“スラムダンク”ではなく、地道に何度も何度も練習を繰り返したこのジャンプショットが決まりタイムアップ、幕が閉じます。
 
これは中国語学習でも同じようなことが言えます。つまり、自分が繰り返し練習し、一つ一つ積み上げてきた努力が最後に結果を左右するのです。基礎練習というのは決して楽しいものではありません。早く次のステップに進みたいという衝動に駆られるのもわかります。私も幾度となくそのような葛藤に苛まれながらも、しっかりと基礎練習をやり遂げました。発音練習ではちり紙を口の前にあてて、何度も何度も有気音・無気音の練習を繰り返しましたし、口やあごが痛くなるまで苦手だった
捲舌音、鼻母音の訓練も決して怠りませんでした。それが奏功し、今では発音に関しては北京人と間違われるくらいのレベルまで到達しました。文法も入門、初級の段階でみっちりやったおかげで、後々受験したHSKでは、塾に通ったり、参考書を勉強したりといった対策なしに好成績を収めることができました。
 

入門、初級における基礎がしっかりできていないと、後々必ずひずみが出てきます。発音、文法、聞き取りのどの分野においても、基礎学習をしっかり行い、本物の中国語力を身につける心がけが必要です。
 

スラムダンクの安西先生の名言「下手糞の上級者への道のりは己が下手さを知りて一歩目」が忘れられません。自分の苦手な分野を見つけ出し、一歩目を踏み出してください。

 
ちゃい語大学アドバイザー
村哥
 

執筆者PROFILE:

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